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11.52013
婚外子相続格差違憲判決で注目を集める「寡婦控除」
◆きっかけとなった判例
法律上婚姻関係のない両親から生まれた「婚外子」(非嫡出子)の相続について、「法律婚の子(嫡出子)の2分の1」とする民法の規定をめぐり争われた遺産分割審判において、2013年9月4日、最高裁大法廷は、「父母が婚姻関係になかったという、子供にとって選択の余地がない理由で不利益を及ぼすことは許されない」とし、同規定は憲法に違反しているとして、無効とする判断を下しました。
この決定を受け、政府は、早ければ今秋の臨時国会で民法改正案を提出する見込みですが、相続に限らず多方面に影響が及ぶ可能性があります。その1つに、「寡婦控除」があります。
◆「寡婦控除」とは?
寡婦控除は、女性の納税者が所得税法上の要件を満たす場合に受けられる所得控除で、控除額は27万円(特定の寡婦は35万円)です。
所得税法上の要件とは、その年の12月31日時点において、(1)夫と死別もしくは離婚した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、扶養親族または生計を一にする子がいる人、(2)夫と死別した後婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人です。
いずれも民法上の「婚姻」を前提としているため、非婚女性には適用がありません。
◆適用要件緩和を求める動き
これによる影響は、所得税の負担増だけではありません。寡婦控除後の所得税をもとに算定される住民税や国民健康保険料、保育料、さらには公営住宅の入居資格やその家賃などにも及ぶため、非婚女性はかなりの経済的負担増を強いられることになります。
そのため、日本弁護士会連合会(日弁連)では、国や地方自治体に対し「みなし寡婦」の取扱いを求める要望書を提出しており、一部自治体では非婚女性への適用を認めるところも出始めています。企業においてもこれらの動向に注意を払う必要があるでしょう。