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今秋の最低賃金引き上げが企業に与える影響とは?—約2割の企業で最低賃金割れの見込み

2024年度の最低賃金引き上げが目前に迫っています。今年は例年になく大幅な引き上げが見込まれており、企業側にとって対応が急務となっています。東京商工リサーチが実施した「2024年『最低賃金引き上げに関するアンケート』調査」では、多くの企業がこの問題に直面していることが明らかになりました。

最低賃金割れは約2割の企業で発生の見込み

調査によると、全体の19.27%の企業で最低賃金割れが発生する見込みです。特に中小企業では、長時間労働が通常のため、最低賃金が従業員の月収に大きく影響することが懸念されています。例えば、最低賃金が1,054円に引き上げられた場合、月173時間勤務の従業員の月収は182,342円となり、これを下回る給与設定をしている企業は大きな調整を迫られます。

かつてはアルバイトやパート従業員が主に最低賃金の対象でしたが、近年の引き上げにより、高卒新入社員の初任給が最低賃金に届かないというケースも増えています。この影響により、特に若手社員の給与水準がフラット化し、不満が募ることで離職が増加する懸念も高まっています。

企業の対応策:価格転嫁と生産性向上がカギ

最低賃金の引き上げに対して、企業はどのような対策を考えているのでしょうか。調査結果では、以下のような対応策が示されています。

商品やサービスの価格に転嫁する(全体48.55%)

設備投資を行い、生産性を向上させる(全体26.70%)

雇用人数の抑制(全体16.75%)

従業員の雇用形態の変更(全体14.60%)

特に価格転嫁や生産性向上が企業にとって重要な対応策となる一方で、18.36%の企業は「対応策がない」と答えています。賃金上昇に対応できるためには、収益性と生産性の確保が不可欠です。

2030年台前半に向けた長期的な視点が必要

政府は2030年台前半に全国加重平均で最低賃金を1,500円にする方針を掲げており、今後も毎年約50円の引き上げが見込まれます。これにより、企業は賃金制度の見直しを余儀なくされ、特に若手社員の賃金カーブの調整が求められます。

経営全体としても、人事部門から積極的な提言を行い、持続的な成長を目指すための対応が必要です。今後の最低賃金引き上げに備え、企業全体での収益性と生産性の向上がより重要となる時代が訪れています。

最低賃金引き上げへの対応は企業ごとに異なる状況があります。今後も経済情勢に柔軟に対応していく必要がありそうです。

参考:東京商工リサーチ「2024年「最低賃金引き上げに関するアンケート」調査(2024/8/21)」

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